2017年7/1日より映画が上映開始された「忍びの国」。

私は原作小説を読んだので感想や、映画の詳細などを書きたいと思います^^

 

感想はネタバレを含むので、まずは映画のあらすじなどをまとめてから、

感想を書く流れにしています。

 

映画や原作をこれからチェックしたいから、ネタバレや結末を知りたくないという方は

感想前にページを閉じるなどご注意ください。

目次

忍びの国 映画

映画「忍びの国」オリジナル・サウンドトラック

忍びの国 あらすじ

時は戦国。忍びの無門は伊賀一の腕を誇るも無類の怠け者。
女房のお国に稼ぎのなさを咎められ、百文の褒美目当てに他家の伊賀者を殺める。
このとき、伊賀攻略を狙う織田信雄軍と百地三太夫率いる伊賀忍び軍団との、壮絶な戦の火蓋が切って落とされた──。
破天荒な人物、スリリングな謀略、迫力の戦闘。「天正伊賀の乱」を背景に、全く新しい歴史小説の到来を宣言した圧倒的快作。

(原作より)

忍びの国 映画 キャスト

ここでは忍びの国のキャストをまとめています。

原作を読んだ印象を元に、どんなキャラか一言二言添えています。

 

映画版では登場しないキャラも一応まとめています。

(魅力的なキャラが多いので^^)

 

伊賀国側

無門(むもん):大野智

「絶人の域」とまで評される伊賀一の忍び。

銭が第一の伊賀の忍びらしい忍び。でも、お国には弱い一面も。そして、怠け者。

 

お国(おくに):石原さとみ

無門が安芸の国から「夫婦になってくれ」と盗んできた女子。

武家出身で銭にうるさく、無門はお国にベタ惚れな上、稼ぎも少なく頭が上がらない。未だに夫婦になってもらえていない。

 

百地三太夫(ももち さんだゆう):立川談春

伊賀の地侍で十二家評定衆の1人で伊賀国内ではなかなかの影響力の持ち主。

無門や文吾の雇い主。

 

下山甲斐(しもやま かい):でんでん

伊賀の地侍。十二家評定衆の1人。身内の生死にもこだわりを見せない冷酷な男。

 

下山平兵衛(しもやま へいべえ):鈴木亮平

甲斐の息子で弟を殺されたことがきっかけで、

以前より持っていた「人情のかけらもない=伊賀の忍びは人ではない」という思いから伊賀を裏切る。

伊賀では珍しい常識人。

 

下山次郎兵衛(しもやま じろうべえ):満島真之介

下山家の次男で平兵衛の弟である次郎兵衛。

彼の死が物語を大きく動かすきっかけに。

 

音羽半六(おとわ はんろく):きたろう

十二家評定衆の一人。薄情で冷徹な伊賀忍者らしい忍び。

 

文吾(ぶんご):映画では未登場

後の石川五右衛門。相当な美男子だったそうな。

天正伊賀の乱当時は盗みよりも殺しが好きな男。

 

鉄(てつ):映画では未登場

伊賀の忍びの武器を一手に担う子供の鍛冶職人。なんだかんだ無門との絆が深い。

 

木猿(きさる):映画では未登場

老忍者で衰えつつも伊賀随一の土遁の達人。

柘植三郎左衛門の元下人。


伊勢 織田側

 

北畠信雄(織田信雄)(おだ のぶかつ):知念侑李

織田信長の次男で北畠家に政略結婚で婿入り。偉大な父信長を持ちが故の大きな悩みを持つ。

そのためか幼稚で感情的になりやすく、当初は無能呼ばわりだが。。。

無門も羨む美男子。

 

長野左京亮(ながのさきょうのすけ):マキタスポーツ

身長150cmと小柄ながら120cmある大太刀をいとも簡単に操る。

日置大膳とともに伊賀の忍びにも存在を知られる武将。

 

日置大膳(へきたいぜん):伊勢谷友介

180cm以上ある大男で伊賀の忍びも恐れる武将。弓の達人(現在も日置流という弓の流派が残る。)

元は伊勢国の北畠具教に仕えていた。

織田の軍門に下ったことで泣く泣く信雄の家臣となった経緯や、忠誠心を大事にするまっすぐな性格のため

とある事件を一件に、信雄を拒絶しウマが合わない。

 

北畠具教(きたばたけ とものり):國村隼

伊勢を統治する北畠家の当主。

信親、長野左京亮、日置大膳、柘植三郎左衛門に襲われる。

 

北畠凛役(きたばたけ りん):平祐奈

北畠具教の娘。織田信雄と政略結婚をして妻となる。

 

柘植三郎左衛門(つげさぶろうさえもん):映画では未登場

北畠家の一族である木造家の元家老。

力を失った北畠をいち早く裏切り、織田側へとついた。

 

映画 忍びの国 配役で思ったこと

映画のCMもそこそこに、配役のイメージもしてみようと思いながら原作を読んでいたのですが、

(後で実際の映画のキャストとイメージが合うか答え合わせ^^)

 

原作を読んでいて思ったのは、最初主役の無門は小栗旬あたりが合ってるかなぁなんて思っていたのですが、

読み進めていくうちに無門の人となりが分かってくると「あ、これは大野くんがぴったりだわ。」と。笑

 

お国は石原さとみで文句なし。

むしろ、忍びの国の映画の配役はかなりイメージに近いなと。

 

ただ、残念だと思うのが

文吾、鉄、木猿、柘植三郎左衛門と原作でなかなかの存在感を発揮していたナイスキャラが

映画では出てなかった点は残念でした。

 

文吾はちょこちょこと出てくるキャラで、出番も多くないものの、

存在感はあるし、相当なイケメンでモテ男らしい人物だし(石川五右衛門だし。)

 

鉄は一匹狼の無門がぶっきらぼうに接する少年だけど、

心の奥底では可愛がっているように見えるし、鉄の前では無門が自然体でいられる数少ない人物の一人ですし、

 

柘植三郎左衛門は原作では主役級のメインキャストと言えるほどの主要キャラだし、

木猿も個性のある忍びだったので、映画に出てないのは寂しいなと思いました。

 

ただ、映画版も原作者である和田竜が脚本に関わっているので、

原作を読んだ後に素直に映画も面白そうだと思いました。

きっと面白いんだろうなぁ、と。

 

忍びの国は本当に登場人物それぞれに魅力があって、

配役もなかなか良いと思います。

時代劇ものは映像化されると、またグッと魅力が増しますよね。

 

ですので、観に行こうか迷っている次第であります。

ということで、原作のネタバレ感想にうつりたいと思います。

忍びの国 ネタバレ

ここからは原作小説のネタバレと感想を書いています。

映画をこれから見る、ネタバレを知りたくないという方はページを閉じるなどご注意ください。

 

忍びの国 小説 ネタバレ(話の流れ)

第1章

伊勢国を完全に支配するため、国司の北畠具教を暗殺するべく4人の武士、織田信雄とその家臣、長野左京亮、日置大膳、柘植三郎左衛門。

4人は具教のいる三瀬谷という集落へと向かっていました。

 

この時の伊勢国は具教は信雄の父織田信長と「大河内城」で戦をした結果、

和睦の条件として6女の凛を信雄へ嫁がせていた。

 

織田信長の狙い通り?信雄の権力が北畠家内で強くなっていき、

北畠家の力が弱くなってきたところで起きた、具教暗殺計画。

 

具教の暗殺についてきた左京亮と大膳はもともと具教の家臣でしたが、

力を失った北畠から徐々に信親に従っていく形になっています。

(左京亮と大膳は大河内城の戦の時、北畠の家臣として活躍した過去があります。)

柘植三郎左衛門はいち早く、信親へと寝返っています。

 

具教へは左京亮が一騎打ちに挑みます。

具教は死を覚悟していますが、

剣術「塚原卜伝」の達人でもあり左京亮を返り討ちにし追い込みます。

 

止めを刺されそうになりますが、

助太刀に入った大膳によって具教は致命傷を受けてしまいます。

 

大膳に止めを刺せという具教ですが、

まっすぐな性格の大膳は元の主を斬ることはできないと断ります。

 

そうこうしていると、突如具教の首に棒手裏剣が刺さります。

投げたのは柘植三郎左衛門でした。

三郎左衛門は具教を裏切った際に妻と娘を殺された強い恨みを持っていました。

 

具教は息を引き取ります。

背後から襲うとは卑怯なやつだと言わんばかりの大膳。

 

柘植三郎左衛門は北畠を裏切る前は北畠家の一族である木造家に仕えた武士ですが、

元々は柘植家は伊賀の地侍だった過去がありました。

そのため、長野左京亮、日置大膳には「伊賀者である」三郎左衛門は見下されていました。

(屋根の上からは伊賀の忍び「文吾」がこの一部始終を見ていました。)

 

具教の暗殺に成功した信雄でしたが、突如信長が現れます。

信長は伊勢国を完全に手に入れようと、一族を抹殺しに来ていました。

 

そんな中、戦場から逃げ出そうとする2人の男がいます。

先ほど屋根の上から一部始終を見ていた伊賀の忍びである

文吾(後の石川五右衛門)ともう一人の下人でした。

 

彼らは具教の持つ宝物の茶器「小茄子(こなす)」の場所を偵察するために

具教の館に忍び込んでいましたが戦になった為、逃げだしてきてところでした。

 

2人の忍を見つけた信長たち。

信長は大膳に「5人張り」と呼ばれる強弓を出し

大膳に「この弓が使えるか?」と挑発してきます。

 

弓の名手である大膳はその弓を使い、見事に伊賀の下忍を討ち取ります。

その大膳の強弓によって伊賀者の右足は1本目で付け根から切断し、2本目で首を切断しました。

 

もう一人(文吾を)も狙えと言われますが、

大膳は「弱きものをなぶるは御免蒙る」と弓を打つのをやめました。

 

信長に断りを入れる大膳を見て、信親たちは凍りつきましたが、

信長はその大膳が気に入った様子で愉快に笑い、その場は収まりました。

そのおかげで文吾は運良く逃げ出すことができました。

 

この戦により織田は伊勢国を手に入れましたが、

信長は伊勢に隣接する伊賀の国を攻める事には非常に慎重な姿勢を見せていました。

 

第2章

場面は伊賀の国へと移ります。

国を治める大名もおらず、66人の地侍がひしめく伊賀の国では

絶えず国内での領地争いが行われています。

 

伊賀の国は特殊な国でこの時代においてはまさに異端でした。

・人を出し抜くことが普通

・義理人情に薄く、銭さえもらえれば簡単に裏切ったりする

・銭にならないことは上の命令でも普通に断ったりする

・普段争っている相手でも、戦以外の時は普通に話したりする

 

そんな状況の中、いつものように十二家評定衆の地侍でもある

百地家と下山家で小競り合いが起こります。

その際、下山甲斐の次男である次郎兵衛は百地三太夫に雇われた無門によって殺されてしまいます。

 

面倒臭がりの無門は三太夫に銭をやるからと言われ、戦場に来ていました。

国内での争いでは、基本的に下人は銭をもらえないので嫌々戦場に出ることがほとんどですが、

伊賀一の忍びと名高い無門だけは三太夫に秘蔵っ子として特別扱いされている経緯があります。

(普段、伊賀の忍びは他国に雇われる事で銭を稼いでいます。)

 

仕事を終え、周りの戦いには興味がないといった感じで

めんどくさそうに帰ろうとする無門に対し、弟を殺された平兵衛は戦いを挑みます。

平兵衛の実力が相当なものだと分かった無門も本気になり、

真剣勝負が始まろうとしたその瞬間。。。

 

伊賀国内に響き渡る大きな鐘が鳴ります。

この鐘は十二家評定衆の会議の知らせであり、

どんな状況でも会議所である平楽寺に集まらなければいけません。

つまり、この小競り合いも途中であっても中止になります。

 

下山と百地の戦闘はピタッと止みます。

今まで戦っていた目の前の敵とも挨拶を交わしながら、戦さ場を後にしていく忍びたち。

異様な光景ですがこれが伊賀の日常です。

 

そして、鐘の知らせを聞き、今まさに敵同士だったはずの大将の下山甲斐と百地三太夫も

一緒に会議に向かおう等と話をしています。

 

この時、平兵衛は甲斐に次郎兵衛の死を伝えていますが、

甲斐はまるで感情を示しません。

むしろ、感情を出す平兵衛を見て意外そうな表情さえ浮かべていました。

 

結果的に、この戦で長男の下山平兵衛は息子(次郎兵衛)が死んでも、

何とも思わない父の甲斐や、伊賀の忍びの習性に不満が爆発してしまいます。

(下山平兵衛は伊賀では珍しい常識的な考えを持った忍び)

 

十二家評定衆の会議が開かれたのは、

信長が伊勢を落とした事をきっかけに今後の方針を決める事でした。

 

普段は伊賀国内では66人の地侍が争いを行なっていますが、

他国との戦や問題が起きるときに限っては

選ばれた十二家評定衆の会議の決定に従って行動するようになっているようです。

 

そして、会議で決定したのは「織田の軍門に下る。」ということでした。

使者としては平兵衛と文吾が選ばれ、伊勢へ向かうことになります。

この時、平兵衛は伊賀の忍びたちへの報復を決意しています。

 

無門は妻であるお国(お国には夫婦としてまだ認められていませんが。)の元へ戻る前に、

伊賀の忍びの武具を作る鍛治職人の鉄の小屋へと向かいます。

 

唯一お国には頭の上がらない無門は、普段は鉄の家に転がり込み、

稼ぎがあったり、何か話があるときだけ家に帰っているようです。

(伊賀の忍びらしい性格の無門ですが、そのやりとりや心の内を読んでいると親近感が湧く無門とお国の場面は、個人的にすごい面白くて見所の一つだと思っています。)

 

お国には「夫婦になりたければ、年に四十貫(お国は裕福な武家出身で同等程度の豪華な暮らしができる金額)」稼いでこい」と言われています。

無門の稼ぎは一貫と300文ほど。

 

また、お国は無門の本当の名前を知りたがっていますが、

無門は答えることができません。

(無門という名は三太夫がつけた。)

 

ちなみに。。。

無門は女を落とすことに今まで百発百中だった術がお国には通じなかったことが、

お国に夢中になるきっかけでした。

 

常に稼ぎのことをねちねちと言われ、不機嫌なお国。

それでも惚れている無門の一番の関心は、いかにお国の機嫌をとるか?

これだけです。

 

伊勢に向かう道中で平兵衛は文吾に攻撃をします。

そのまま平兵衛は伊勢に向かうのですが、

傷は深いものの死なない程度の傷を与え、

文吾には伊賀に引き返し自分が裏切ったことを伝えさせました。

 

伊勢で平兵衛は捕まりますが、信雄との対面を望みます。

当然、「伊賀者」として忍びを忌み嫌う伊勢の武士たちによって平兵衛は追い込まれますが、

伊賀の忍びとしては異端とも言える平兵衛の言動に、

自分と同じ考えを持っていることを感じ、柘植三郎左衛門が助け船を出してくれます。

(三郎左衛門は伊賀にいた頃、幼い平兵衛を見たことがあり、下山家とも面識がある。)

 

また、平兵衛は縄に縛られる際は自らの肩の関節を外し、

逃げたり何もしないという意思を示して捕まっています。

 

織田信雄がいる田丸城に連れてこられた平兵衛は信雄と話す機会を得ます。

「伊賀の者どもは人にあらず。伊賀を攻め、人でなしどもを根絶やしにしてくれ。」

と平兵衛は信雄に頼みます。

 

伊賀の策略だと信親始め、そこにいた家臣は皆警戒しますが

同じく伊賀を潰したい三郎左の話術もあり、信雄に伊賀攻めを決心させます。

 

あの信長でさえ伊賀への侵攻は慎重。

どのような手を使えば良いのか?そこが信雄たちの一番の懸念ですが、

三郎左は伊賀領内の丸山城を再建することを提案します。

 

過去には途中で頓挫したものの、

三郎左は過去にも丸山城の建設を伊賀に提案し成功した経験があり、

秘策もあると自信を持つ三郎左に信親は任せることを決めます。

 

三郎左自らが使者として伊賀に向かうことになり、

大膳も「思案がある」と言って三郎左に同行することになります。

 

三郎左と大膳が伊賀に到着します。

伊賀では話を聞いていた十二家評定衆との会議が開かれる約束になっています。

 

領内に城を建てた後、攻め込むつもりだろうと、

三郎左の丸山城の再建の提案を当然のように断る十二家評定衆。

当然、三郎左も相手の出方は分かっていて、秘策を出します。

 

それは

・城を建てる経費と伊賀の者への給料は全部伊勢持ち

・給料は伊賀の地侍と下人にとって十分すぎるほどの金額

 

この提案を受けた十二家評定衆はあっさりこの条件に乗ります。

銭が良ければ簡単に話に乗ってくる伊賀に、大膳は心の底で呆れかえっています。

 

そして、「信雄の狙いは伊賀を潰すことだ」とはっきりと十二家評定衆に言い放ちます。

これは三郎左や信親のやり方に納得も出来ず、

そもそも伊賀攻めは得策ではないと思っていた大膳の本音であり、

伊賀攻めをやめさせようとして放った言葉ですが、

かえって十二家評定衆を乗り気にさせてしまい、三郎左の策略を止めることはできませんでした。

 

大膳は伊賀攻めを潰すことを諦めます。

まんまと策にハマったと思っていた三郎左でしたが、

実は「伊賀を攻めさせて逆に伊勢を倒す。」と

百地三太夫と下山甲斐の狙い通りの結果になっていました。

(文吾に平兵衛の裏切りを聞いたときから、この策略を練っていた。)

また、大膳も伊賀側の狙いには気づいていませんでした。

 

伊賀を攻めさせるようにした理由は

大膳の織田に仕えることになった経緯や、大膳の性格、会議での言動を見て、

大膳が伊賀攻めには参加しないだろうと予想していたためです。

 

伊賀でも有名な大膳と、大膳が率いる軍勢が参戦しないとなれば

伊賀には勝算があったためです。

 

そして、一番の理由は

天下の織田が率いる伊勢を倒すことで伊賀の名は天下に知れ渡り、

その結果、伊賀の忍者を雇おうとするものが増えて

儲けが大幅に上がるという狙いがあったからです。

(銭が一番の伊賀らしい考えです。)

 

第3章

丸山城は伊賀の者たちによって作られていきます。

高い給料に下人たちも真面目に働いているようです。

(普段、忍びの仕事がないときは百姓をしている下人たちには破格の給料が出ていました。)

 

無門も稼ぎの良い築城に参加していて、お国の元へと給料を届けています。

築城の仕事によって、無門もお国と約束した四十貫文を稼ぐことができたので、

お国の機嫌も今までになく良いようです。

 

ですが、丸山城の築城もいつかは終わります。

当然稼ぎは元に戻ってしまうので、そうなれば無門はお国の機嫌が悪くなると分かっていますが、

そのことをお国に伝えなければなりません。

 

気が重いものの無門はお国にそのことを告げますが、

お国の機嫌は変わりませんでした。

お国は伊賀が織田の軍門に下ると予想しているようで、

築城での働きをきっかけに、後々無門が出世すれば良いではないか?と考えていました。

無門はその考えを聞いて、げんなりしてしまいますが逆らうこともできません。

 

そして、丸山城が完成します。

すると待ってましたとばかりに

三郎左は丸山城から伊賀者をすべて追い出して乗っ取ってしまいます。

 

しかし、伊賀側も待ってましたとばかりに

完成した城にはあらかじめ文吾を忍ばせていて、城一体に火を放ちます。

瞬く間に丸山城は焼け落ち、三郎左の軍勢は1000人以上も討ち死にしてしまいます。

 

してやったりの伊賀に対し、信雄は怒り狂いすぐに出陣しようとしますが

大膳が「日置家は伊賀攻めをお断りしますわ。」と出陣を拒否します。

大膳が出陣しなのであれば、勝てないと悟っている左京亮も出陣を拒否してしまい、三郎左もこれには同意見のようです。

 

信雄は大膳抜きでは勝てないと言われ、怒りは収まりませんが、

三郎左になだめられて伊賀攻めを一時とどめ置くことに決めました。

 

それから1年が過ぎ、未だに信親は伊賀には攻めていませんでした。

この間、信雄は石山本願寺攻略のため摂津の国へ行き、

さらに秀吉の助太刀のために、播州へも駆り出されたため

伊勢はもぬけの殻と言っても良いような状態だったので伊賀攻めは行われなかったのです。

 

そして、とうとう伊勢の田丸城へと信雄は戻ってきました。

信雄は帰ってきましたが、大膳との仲が悪いことも掴んでいた伊賀は、

伊賀へと攻めてこないのではないかという心配もしています。

 

そこで、百地三太夫は無門の想い人であるお国を利用して、何か企みがあるようでした。

十二家評定衆の会議が終わり本堂を出ると、外の廊で待つ下人たちに

信雄が近いうちに伊賀に攻め込んでくるから迎え撃てと高らかに宣言します。

 

ですが、自国のために戦うことは「銭がもらえない戦い」であることを知っている上に、

織田が率いる大勢の伊勢軍が相手ということもあり、

下人たちの士気はまるで上がりません。

 

その思いは無門も当然持っていて、「銭は誰が払うんだ。」と抗議します。

三太夫は敵国が攻め込んで来た際は、結束して戦う掟があるだろうと、

怒りをあらわにします。

 

普段は特別に銭をもらったりなど、特別扱いをしてもらっている無門も従うより道がありませんでした。

無門は沈んだ気持ちでこの事をお国に伝えますが、

やはりお国の機嫌はいつにも増して不機嫌になってしまいます。

 

無門はとっさに京都に逃げようと提案しますが、お国は取り合ってくれません。

国を捨てて逃げるなんて、武家出身のお国には理解できないばかりか、

京都に逃げてからどうするのか聞くも、無門に具体的な考えがない事を見抜き機嫌が悪くなっています。

 

そんな中、文吾が下人だけの会議を開くことになったと無門の元に来ます。

会議場所の平楽寺の屋根へと行くと、思いの外多くの下人が集まっていました。

会話の内容が周囲に漏れないように「葉擦れの術」という葉が擦れるような音を出して、下人たちは会議をします。

 

多くの下人たちは伊賀から逃げ出す事を考えていました。

命をかけても銭はもらえないし、左京亮や大膳などの強敵を相手にするのはゴメンだと言う意見が大半です。

(十二家評定衆は下人たちには大膳が戦に出てくると伝えています。)

 

およそ半数以上の下人が逃げようと思っているようですが、

お国が残ると言って聞かないので、無門としては残らざるを負えないこともあり、

無門は何かを決心したようです。

(無門はこのままでは戦に負け、伊賀がなくなると感じています。)

 

会議が終わると、そのまま無門は大膳に会いに七日市城へと向かいます。

大膳の所領に住む領民の甚平の小屋へと忍び込んだ無門は大膳を待ちます。

(大膳は度々、甚平に仕留めた鹿の血抜きを頼みに訪れているようです。)

 

大膳と会うと、敵意がない事を示すために肩の骨を外し、

自ら縄を縛るように言うことで、大膳との会話にこぎつけますが

大膳が信親を止める気がないことが分かると、

あばらの骨を外して縄を抜けるという達人技で、縄を抜けて

その場から逃げ出すことに成功します。

(無門いわく、この術はめちゃくちゃ痛いみたいです。)

 

その後、さらに無門は信親がいる田丸城へと単身忍び込みます。

簡単に信親が寝る部屋へと忍び込んだ無門は

信雄の首元に剣を突き付けて、伊賀攻めをしないよう脅します。

 

普通の大人であれば、伊賀者に対しては声をあげたり暴れたりせずにやり過ごすのが一番だと知っているところですが、

信雄は無門の予想以上に子供っぽく、大声で喚きちらしてしまいます。

これが却って功を奏し、使用人たちが集まって来てしまいます。

(無門の「嘘だろ」というセリフが印象的です。)

 

信親「おのれら虎狼の輩なぞ、この信雄が根絶やしにしてくれる。男はおろか女子供のすべての首を切り離し、晒し者にしてやるからそう思え!」

 

お国も殺すという意味に聞こえた無門は、

その言葉を聞き強烈な憎悪を持って信親に言い放ちます。

 

「ならばその首、あずけておこう。わしが戦場にて直々におのれが首を切り取り、おのれが名を地に叩き落とした上で地獄に落す。」

 

今までに感じたことのない殺気感じた信雄は、へたり込んでしまいます。

無門は駆けつける信親の部下をいとも簡単に倒し、田丸城から去って行きます。

 

その後、大膳が信雄の元へとやって来ますが、

錯乱状態の信親は今すぐ伊賀を攻め滅ぼすと騒ぎ立てていました。

 

信雄は大膳にお前がいなくても伊賀など滅ぼせると言いますが、

「おのれ(大膳)がいなくともーーー」

この言葉を聞くと、大膳は直感で伊賀によって伊賀攻めをするように操作されていると勘づきます。

 

自分(大膳)が戦に出ないことで伊賀が伊勢に勝てると見込んでいることを見抜きます。

大膳自身もそう思うと共に、牢にいた平兵衛の話を聞くことで更に確信を得ると、

伊賀の卓越した策略に、今まで伊賀の忍びを馬鹿にしていた考えを改め、戦う事を決意します。

(弱いものいじめ=伊賀者など、相手にすることもないと思っていた。)

 

そして、平兵衛を連れ出し、伊賀の狙いを伝えると共に、

信雄に戦に出ると言いますが、今更信雄は受け入れようとしません。

 

自分(大膳)の思いのままに戦う戦わないと決めおって。

自分(信親)に臣従を誓わない奴は戦にいらない。

お前(大膳)がいなくても勝ってみせる!

おのれらもじゃ!とヤケになったついでに周りにいた家臣に対しても叫ぶ信親。

 

すると、大膳は信雄の胸ぐらを掴み「おのれのためなどではないわ」と叫ぶ。

「おのれ申したな。」と言う信雄ですが、ついには泣き出してしまいます。

 

信親は家臣たちが、自分を慕っていないことは分かっている。

自分の父は天下の織田信長。

いくら頑張っても自分は父には敵わない。

偉大すぎる父を持った子の気持ちが分かるのか。

と、話すとポロポロと泣きながらへたり込んでしまいます。

 

信親は自分が父に比べて劣っているという自責の念を持ち、

なんとかしようとする結果、空回りをしていることも理解していました。

 

大膳はずっと信親のことを有能ではないと思っていました。

しかし、信親の本音を聞き、本人も自分が無能だと理解している上での

これまでの態度(自分を強く見せるため、必死に強がり高圧的な態度をとっていた)だったのだと知り、信親に謝罪をします。

 

このことがきっかけで

大膳は表面的ではなく、心の底から信親に忠誠を誓うことになります。

信親の本音を知り、今まで信長に無視されてきた信親を男にしてやろう、この男にならついていってもいい。

そんな大膳の思いが垣間見れるような良いシーンでした。

 

大膳始め、左京亮らその他の家臣一同の心が一つになり、

伊賀攻めへと話は進んでいきます。

 

一方、無門は田丸城から逃げ出し、伊賀に戻る途中で飯福田寺へと来ます。

(あまりの眠気で寝るために立ち寄りました。)

 

しかし、そこでは北畠具教の娘「凛」が祈祷をしていました。

凛は父具教を討った信雄の元を離れ、飯福田寺へと来ていたようです。

そこで無門に信親を討つように頼み、謝礼として有名な茶器「小茄子(こなす)」無門に託します。

小茄子には1万貫の価値があるといい、無門は受け取ると凛の願いを受け入れる返事を残し、その場を立ち去ります。

 

その後、満足した凛は自刃してしまいます。

無門は。。。凛の願いを聞いてやるつもりなど毛頭ありませんでした。

 

「小茄子」を手に入れた無門は伊賀のお国の元に戻り、

再び京へと行こうとお国を誘います。

小茄子を売れば、お国の求める生活ができると言いますが、

返ってきた言葉は「恥をしらんか。卑怯者。」でした。

 

てっきりお国の機嫌は良くなり、一緒に逃げてくれるものだと思っていた無門は驚きます。

銭のことにうるさいお国ですが、武家出身のお国には祖国を捨てて逃げ出すなどありえないことでした。

 

しかし、無門も

・伊賀の下人の半数が逃げる

・信雄が「女子供も容赦しない」と言っていた

と伝えると、さすがのお国も意気地がなくなってしまい、逃げることを承知しました。

 

第4章

信雄の軍は11000の兵を率いて伊賀へ向かいます。

・阿波口に信雄軍8000

・馬野口に三郎左衛門、左京亮の軍が1500

・伊勢地口に大膳の軍が1300

 

伊賀国への3つの入り口にそれぞれ兵を配置します。

日置大膳の軍は伊賀の裏をかくために左京亮の軍を装い行動しています。

 

三郎左衛門の軍は通常の戦で着る具足ではなく、

動きの軽い伊賀の忍び同様に忍び装束を着て戦に向かっています。

伊賀側も信雄が攻め込んできたことを察知しており、

前夜にはそれぞれの入口に下人たちを配置して待ち構えています。

 

伊賀の忍び軍

・阿波口の守将は百地三太夫

・馬野口の守将は下山甲斐

・伊勢地口の守将は音羽半六

 

ところが、いざ戦が始まる頃になると、

三太夫は兵が少なくなっていることに気づきます。

「無門はおらんか?」と三太夫は無門の名を呼びます。

 

すると、一人の下人が

「無門なら逃げたのではござりませぬかな。無門だけではない。百地家は木猿と文吾の他は皆逃げましたわ。」

と軽々と言い放ちます。

 

三太夫はその下人を掴み、なぜその事を言わないのか?と詰め寄りますが、

「わしは百地家の下人ではない故な。教える義理などないわ。」

と、薄ら笑いを浮かべながら返答しています。

この大事な時に、下人たちに簡単に裏切られた三太夫は怒りがこみ上げて来ますが、

(これまでのいがみ合いの結果がこれか)

と後悔の念も湧き上がってきます。

 

ですが、時すでに遅し。戦は始まろうとしています。

戦が始まる頃、無門や逃げ出した下人たちは御斎坂へ向かう山の中腹にいました。

 

無門は上野盆地の方を見下ろすと、

逃げ惑う伊賀者たちが無数の点になって交錯している光景を目にします。

ですが、興味のない表情を浮かべると「行こう。」とお国を促し再び歩き出します。

 

戦場では下人が半数以下になってしまった伊賀軍は

どんどん劣勢に追い込まれていきます。

三太夫や半六はなんとかして、下人たちを呼び戻そうと躍起になっていますがどうすることもできません。

 

そんな状況の中、伊勢地口へと繋がる青山峠を下った小山の頂上に日置大膳の姿を見つけ

半六「負けるぞ、この戦」

震える音羽半六、文吾たちの姿がありました。

 

一方、無門は逃げる道中でお国の機嫌がどんどん悪くなっていることに気付きます。

そして、このまま京へ逃げたとしてもお国の機嫌は一生良くならないだろう予感を感じていました。

無門にとってはお国の機嫌が一番です。

お国の機嫌が良くならないのであれば、無門にとってこのまま伊賀の国を逃げてもどうしようもないと悟ります。

 

ーーどうする?やるしかねぇな。ーー

 

無門「やっぱり行くわ」

お国「どこへ?」

無門「戦」

お国「一人で行かれるのですか?」

 

すると、お国は小茄子を取り出し無門に渡します。

 

無門は「ここに一万貫ある。北畠の小茄子だ。これより合戦に加わる者には、雑兵首1つにつき十文。兜首(武将)なら十貫。信雄が首には5千貫を払う。互いに功名を争うべし」と叫びます。

 

この言葉を聞くと、伊賀者達は目の色を変えて戦場へと一目散に戻って行きました。

無門はお国に小茄子を託して、平楽寺に待つように言い戦場へと戻って行くことにします。

 

この時、お国は無門に

「決して死んではなりませぬぞ。」と涙目になりながら言葉を伝えています。

この言葉を聞き、無門も俄然やる気になり、疾風の如く山を駆け下りていったのでした。

 

窮地に陥っていた三太夫達、戦さ場の忍び達。

もはや限界といったところでしたが、銭のために目の色を変えて

戻って来た下人達の凄まじい加勢もあり一気に息を吹き返します。

 

無門が支払う銭のことは戦場にいた忍び達に伝えられます。

逃げ出した下人達の人数を合わせても、やはり織田軍の人数とは2倍くらいの差がありますが

元々伊賀の忍びが持つ戦闘力に加え、銭の力は大きく形勢はひっくり返ります。

これによって、阿波口と馬野口の進軍を食い止め、押し返すことに成功します。

 

しかし、大膳の軍だけは止められず、伊勢地口への侵入を許してしまい、

大膳は平楽寺へと突進して行きます。

 

無門は次々と雑兵を蹴散らし、兜首さえも簡単に撃ち落として行きます。

狙うは信親の首と、一目散に信親の元へと近づいて行きます。

 

無門の姿を見つけた信親は、再び恐怖の無門が自分の首を狙いに来たと分かり、動揺を隠すことができません。

とにかく無門の首を狙えと叫びますが、無門はどんどん蹴散らし信親の元へと迫ってきます。

 

あと少しで信親の元へ到達しそうな勢いの無門ですが、

一人の下人が無門に「平楽寺が急じゃ」と叫びます。

その知らせを受けた無門は、信雄を目の前にしながらもお国のいる平楽寺へと急いで向かいます。

 

平楽寺では大膳の軍が到着し、平楽寺の赤門に数百の火矢を打ち込んでいました。

戦うしかないと悟ったお国は寺にいた女、子供たちに自らの手で平楽寺を守ろうと叫び、大膳の軍に立ち向かいます。

 

伊賀の女には忍びの心得があるものの、相手は大膳です。

なんとか抵抗していましたが、

大膳が「日置大膳じゃ」と一声、叫ぶと平楽寺の一同は一瞬にして凍りついてしまいます。

大膳の化け物ぶりは誰もが知るところです。

 

「得物を捨てれば命ばかりは助けて遣わす。武器を捨てよ。」

 

そう言うと、女達は次々と武器を手放し、大膳に従います。

ただ、お国だけは騎馬武者の間をすり抜け

馬上の大膳の元へと駆け寄ると、槍を突き出します。

 

お国の凄まじい形相を見た大膳は、

「怖いことよ、無門が女房もかような女子であろうか。」

と呆れたようにつぶやきます。

 

お国「まだ女房ではない。」

大膳「まさか本人か。」

 

お国は武家の出身である私には遠慮はいらない、と大膳に言い放つと

さすがの大膳も大目に見ることはできません。

 

大膳「女、名は?」

お国「お国」

大膳「お国、参る」

 

咆哮を上げた大膳の迫力にお国は棒立ちになってしまいますが、

大膳の槍はお国に襲いかかってきます。

 

その瞬間、間一髪間に合った無門がお国を助け出します。

お国を抱き寄せ、木の上へと舞った無門はそのまま平楽寺の屋根へと飛び移ります。

 

無門「こら大膳、わしが女房に何しやがる」

 

嘘つけと大膳は心の中で思い、苦笑していました。

屋根を降りると、数人の兵士が無門へ襲い掛かりますが、軽々と倒す無門。

その姿を見て「俺は伊賀一の忍さ」と言っていたのは嘘じゃなかったと知ります。

 

そんな中、平楽寺へは伊賀の応援が来ます。

平楽寺はひとまず安泰となった今、

お国は無門に

 

お国「伊賀一の忍びなら信雄を討ちとりなさい。他のものに5千貫を奪われてはなりませぬ」と言います。

 

無門の心の声「結局それか。」

 

思わず眉間をしかめる無門でしたが、

再び信雄の元へと向かうのでありました。

 

その頃、馬野口では伊賀が有利になり始めていました。

織田側の下山平兵衛は三郎左衛門を守りながら、

ジリジリと後退していく状況になっています。

 

ですが、左京亮の助太刀もあり伊賀の下山甲斐を討ち取ることに成功し、少し盛り返します。

下人に自分を助けるように下山甲斐は言いますが、

銭に目が眩んでいる下人達は下山甲斐を守るより、敵を倒すことに集中していてまるで助けてもらえません。

 

ついには寝返った息子の平兵衛に助けを求めますが、

平兵衛は答えず心の中で

(この戦で死んだものの報いを受けよ)

そう返事をしている最中、左京亮に討ち取られます。

 

ところが、文吾らの活躍もあり形勢は相変わらず伊賀側にあります。

平楽寺も大膳を中心に加勢した伊賀に負けず、盛り返して行きますが、

信雄の軍が総崩れとなっている知らせを聞き、大膳は信雄の元へと向かうことにします。

 

そんな中、無門は大膳より一足早く信雄の元へ辿り着き、ついに信雄の首へと刃を向けます。

あと一息というすんでのところで大膳が駆けつけ、信親は窮地を脱します。

 

無門と大膳の一騎打ちが始まります。

大槍を狩る大膳の懐に潜り込みとどめを刺しに行く無門ですが、予想外の怪力によって

無門は大膳に逆に斬られてしまいます。

 

ですが、鎖かたびらを着込んでいた無門は死なずに助かっていました。

今まで一度も戦で外したことがないという、全身の重い鎖かたびら脱いでいく無門。

「どう動くかわしにも分からんぞ。」

(身軽になった自分はどれほどの動きができるのか自分でも分からない。)

 

ただでさえ、素早く圧倒的な動きを見せる無門に一目置いていたのに、

この重い鎖かたびらを脱いだらどうなるのか?大膳は驚きを隠せません。

 

再び戦いが始まると、まるで消えたように見える無門に

大膳は両手を貫かれてしまい、武器を使えなくなり戦闘不能になります。

 

とどめを刺しにくる無門に死を覚悟していた大膳でしたが、

信雄が必死に「5人張り」と呼ばれる強弓を放ったおかげで無門を引き離すことに成功します。

矢は無門を貫き、木の幹へと刺さっていましたが、

無門の姿は消えていました。

その後、信雄は全軍に退却を命じ、伊賀の国から退いていきます。

 

一方、馬野口でも信雄の軍はほぼ壊滅状態に陥っていました。

三郎左は左京亮達を逃すべく、自ら殿軍(しんがり)を申し出ます。

 

忍びである三郎左(元々は伊賀出身)なんかに殿軍を任せられるかと、

左京亮は断りますが、信親も退却し始めたことも知り、

平兵衛に諭されたこともあり、左京亮は退却をします。

 

この際、左京亮は三郎左にこれまでの非礼を

大膳の分も合わせて詫びてから退却して行きます。

 

なんとか逃げ出すことに成功し、田丸城に辿りつく信雄たち。

ですが、田丸城には無門始め多くの伊賀者が侵入していました。

信雄・大膳・左京亮・平兵衛ら4人は孤立してしまいます。

 

そこで、平兵衛は信親達を守るために無門に「川」と呼ばれる決闘を申し込みます。

 

「川」はお互いに線を引き、その内側で戦う一対一の決闘のことで、

線から出ると、負けとみなされ決闘を見守る伊賀の忍び達に総攻撃を受けて死を迎えます。

無論、線から出なくとも、どちらか一方は死ぬまで戦い続ける決闘です。

 

平兵衛は自分が死んでも残りの者たちには手を出すなと約束を求めます。

願いを聞き入れるそぶりを見せる無門ですが、

そこは伊賀の忍びにとっては単なる口約束であることは、

平兵衛も分かってはいます。

 

凄まじい速さでの勝負が始まり。。。

わずかに無門が平兵衛を上回り、紙一重で勝ちます。

平兵衛は死ぬ間際に「約束は守れよ。」と言い残し、死んでいきます。

 

決闘の前までは、全員皆殺しにするつもりだった無門ですが、ふと

(この男は真面目に生き、真面目なばかりに死んだのだ。)

無門は平兵衛を可哀想だと感じます。

 

そして、平兵衛を伊勢の地に葬ってくれるよう大膳に言い、

信親達を殺さずにその場を後にします。

 

無門の心には十二評定衆に対しての怒りがこみ上げてきています。

お国を危険な目に合わせ、平兵衛を伊勢へと放ち、丸山城を焼き、伊賀国を攻めさせた。

三太夫や十二評定衆を地獄に叩き落としてやる、と平楽寺へと無門は向かいます。

 

信親を見逃していいのか?と言う他の下人達も、無門には逆らえず

渋々と引き上げていきます。

 

また、戦の後に無門を心配していたお国は

「無門は生きているのか?」と

近くにいた下人に聞いていますが

「無門は死んだ」

と心無い一言を言われて、悲しみに暮れている描写があります。

(この下人は全くのでたらめで適当に言っていますが、人の不幸が好きなのも伊賀の忍びです。)

 

忍びの国 ネタバレ お国の最後と結末

二日後、無門は平楽寺に戻ってくると、十二評定衆に刃を向けます。

平楽寺では伊勢を退けた祝いとして、地侍や下人達、女子供もみんなでどんちゃん騒ぎの宴が開かれています。

 

この時、心配するお国と再会していますが、無門はお国さえも無視してしまうほどの怒りようです。

無門が本気だと分かり、震える三太夫。

とっさに無門を打ち取ったものには一生の夫役(労役)を免除すると叫びます。

 

すると、下人達は毒の塗った吹き矢を持って一斉に無門を取り囲みます。

そこに「下がりなさい」とお国が無門の元へと歩み寄ってきます。

無門を殺すのであれば、小茄子を叩き割ると下人を脅します。

 

しかし、かえって逆効果になってしまい

下人は一斉に毒の吹き矢をお国に向けて放ちます。

無門が助けに向かうもわずかに間に合わず、無門とお国は毒の矢を受けてしまいます。

毒に耐性のある無門はまだしも、

お国には致命傷となる数本の吹き矢が刺さってしまっていました。

 

死を悟ったお国は薄く目を開け無門に

「無門殿。名は?本当の名を聞かせて」と言います。

「。。。知らんのだ。幼き頃に伊賀へと買われてきた。名など知らん。名前なんてないんだ。」

そう答えると、無門は涙を溢れさせます。

 

お国は「可哀想に」

と寂しげに微笑むと、そのまま死んでしまいます。

 

今まで、こんなやり取りで、心が傷つくはずがないと思っていた無門でしたが

それは伊賀の忍として叩き込まれてきた物であって、

人が持つ本来の気持ちに気づく無門。

 

お国を失ったことで、無門は平兵衛や凛の気持ちがほんの少し理解することができました。

しかし、お国の死など気にも留めずに小茄子を拾おうとしている伊賀者(文吾が拾おうとしています)を見て、

 

無門は

「おのれらは人間ではない」

 

と言い捨て、お国の亡骸を腕に抱えて平楽寺を出ていきます。

そして、無門は伊賀の国から煙の如く消えていきました。

忍びの国 ネタバレ 結末

結末は本編の伊賀と織田軍の戦いの結末と、後日譚の二つがありますが

伊賀と織田軍の戦いの結末は上記に書いた通りなので

ここでは無門が京に移った後の最後の結末などを書きたいと思います。

終章

信親は伊賀攻めの失敗を謝罪しに信長の元へと向かいます。

怒り狂う信長ですが、その元へ無門が現れます。

 

いとも簡単に信長の元へと潜り込んできた無門は、

伊賀の忍びは信長の首を落とすのも可能だ。

事実、こうして俺は潜り込んでいる。

そんな脅威を持つ伊賀は潰した方が良いんじゃないか?といった言い方で信長に問いかけます。

 

そんな無門を信長は気に入り、家臣にならないか?と言いますが

無門は断り、これまた簡単に安土城から逃げ出し姿をくらまします。

 

その後の話

 

無門はお国の亡骸を連れて、京の町に入る前に西野山に埋葬します。

その後、再び伊賀の国を滅ぼしに来た織田軍によって伊賀は壊滅状態になりますが、

その際に無門は鉄を救うためだけに伊賀へと一瞬舞い戻っています。

無事に鉄を救い、京の町へと戻って来た無門は鉄と暮らしているようです。

 

職人のなりをしている無門は忍びから足を洗い、

毎日西野山にお国の弔いにいくことのみを日課に

ひっそりと日常を送っています。

 

そんな無門が三条橋を歩いていると、

対岸からは10人ばかりの集団が見えてきます。

 

無門は文吾が自分を殺しにきたと察し、

不敵な笑みを浮かべながら集団の中へと紛れ込んでいきます。

文吾らが無門を一斉に襲いかかり。。。

 

無門の自慢の二刀を抜いたところで物語は終わります。

(文吾は無門が信長に伊賀を滅ぼすように促したと思い、恨みを持って襲ってきたようです。)

忍びの国 無門 その後

結局、無門はどうなったのか気になる終わり方でした。

読者の想像を掻き立てます。

 

ただ、文吾はその後石川五右衛門として天下に名を轟かせるので、

この忍びの国のその後も、史実通りなら文吾は生きていることになりますよね。

となると、無門は死んでしまってることに。。。

 

無門のことだから、文吾との戦いを楽しみながら死を選びそうな気もします。

(本気を出せば勝てそうですが、あえて。)

もしくは、うまいことその場を収めて跡形もなく消息をたっているのかも?

色々と想像して楽しめる最後だなと私は思いました。

(無門には生きていて欲しいですけどね。)

忍びの国 感想 まとめ

思いの外、長い長い記事になってしまいました。

それだけ内容が濃くて、印象深いシーンが多かったからかな、と思います。

 

無門とお国のやり取りの中で、無門の中に眠る本来の?人間らしさが垣間見えるシーンとかは

親近感というか感情移入せずにはいられませんでした。

 

他にも、銭がもらえると聞いて

一目散に一度は裏切った伊賀の国のために、再び戦場に戻る下人達も

なんだか憎めないというか、ついつい笑っちゃいましたし、なんか良いなと。

 

織田との戦いが幕開けた時に、下人の数が減っていて焦る三太夫に対して

「逃げたのではござりませぬかな?」と平然と言い放つ下人などなど、下人たちは随所に良いキャラを出していて、

私は血も涙もない伊賀の下人達が好きになってしまいました。笑

 

あとは、日置大膳はただただかっこいいですね。

信親が泣きじゃくりながら本音を見せて、大膳たちと心を通わせるシーンも

個人的にはぐっときました。

 

と考えると、織田、伊賀とともに魅力的なキャラが本当に多い。

 

私は歴史物、特に戦国系の作品は好きですが、

地名とか人物、当時の言い回し(古い言葉)は理解しづらくて

エネルギーを使うので、小説とかはあまり読まないのですが、

 

忍びの国は読んでいくに連れてどんどん夢中になっていきました。

さすが、映画になるだけあるわ!

と思いましたよ。

 

映画を観にいくかどうかはまだ迷っていますが、

今後unextとかhuluで動画が配信されたら観たいなと思っています。

 

感動あり、笑いあり、ドキドキの戦いあり。

本当に良い作品です、「忍びの国」

 

和田竜 関連作品の動画

unextでは和田竜が原作のドラマ「のぼうの城」も配信されていました。

これも小説の最後に感想を書いていた児玉清さんがオススメされていたので、

見てみたいなと。

忍びの国が好きな人はチェックしてみても良いかもしれませんね。

 

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>>ドラマ「のぼうの城」動画を見に行く<<